『デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団』(以下『超力兵団』)のストーリーを簡単に言うと、「1931年*1、大日本帝国時代の日本で、デビルサマナーのライドウが『超國家機関ヤタガラス』(日本を霊的な力で守護してきたという天皇崇拝団体。以下ヤタガラス)の命令に従い、『ヤタガラス及び天皇と敵対し、帝都を滅ぼそうとする勢力』を倒しに行く。ついでに(?)ヒロイン・伽耶を救う」である。このストーリー自体、結構問題があると思う。
いずれは本家「ろーだいありー」の「『超國家機関ヤタガラス』はなぜ怖ろしいのか?」シリーズで詳しく書くと思うが、この話のどこが問題かを簡単に説明すると、「当時は侵略国家だった日本で、ヤタガラスと天皇に仕える日本人のライドウが、ヤタガラスを滅ぼそうとする勢力を倒してしまう」ことだ。例えて言うなら、「大日本帝国を滅ぼして、韓国を日本の植民地支配から解放しようとする、韓国人の勢力を倒してしまう」というのに近いだろう。
さらに、私が好きな『シャイニングフォース・神々の遺産』(セガのメガドライブソフト。シミュレーションRPG。以下『神々の遺産』)に例えることも出来よう。この場合、「大日本帝国」を「ルーンファウスト帝国」に置き換えてみれば良い。
『神々の遺産』に出てくる「ルーンファウスト帝国」は、本来は平和国家だった…、しかし「ダークソル」という軍師が現れてから(私はこの人物は悪役ながら好きだけど…)、ルーンファウストの皇帝・ラムラドゥ(ライドウではない…)は豹変し、侵略国家となって戦争ばかりするようになった…、その目的は「封印された邪竜・ダークドラゴン」*2復活のためだった…、という設定である。『神々の遺産』の主人公たちは、このルーンファウスト帝国と戦うために「シャイニングフォース軍」を結成して立ち向かうわけだ。
『超力兵団』の「ヤタガラス」は、一見すると「日本を守護している良い組織」のようだが、「天皇を護れ、逆らうことは許さん」*3という命令をライドウに下すことからすれば*4、「国家神道」*5がモデルとしか思えない。ということは、「天皇が戦争を始めると言い出せば、それを支持する組織」だから、将来発生するであろう日中戦争やアジア・太平洋戦争、東京大空襲、沖縄戦、原爆投下の引き金となって、「アジア圏の多くの人々を死に至らしめ、最終的には大日本帝国を滅ぼしてしまう」存在なわけだ。そう考えれば、実はヤタガラスは『神々の遺産』の「ダークドラゴン」に近い存在とも言える。
なので、『神々の遺産』に例えると、「ヤタガラスに仕えて帝都と天皇を守護する(その行動が将来的には戦争を引き起こしてしまう)」ライドウの方が悪役で、「ヤタガラスと敵対して天皇制国家を滅ぼそうとする勢力(そうすれば将来起こるであろう戦争を防ぐことが出来る)」が善人、ということになるのではないか。元々ライドウは『帝都物語』の魔人・加藤*6がモデルなので、余計そう見える…。そう、むしろ『神々の遺産』の悪役「軍師・ダークソル」の方に近いのがライドウで、正義の「シャイニングフォース軍」に近いのは「ライドウと敵対する勢力」ではないのか? と思ってしまう。
参照ゲームソフト
- デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団(プレイステーション2/発売元・アトラス)
- シャイニングフォース 神々の遺産(メガドライブ/発売元・セガ)
参考文献
- デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団 超公式ふぁんぶっく(ファミ通編集部責任編集/エンターブレイン)
- デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団 超公式完全本(ファミ通編集部責任編集/エンターブレイン)