はてな匿名ダイアリーより。
要は創作物であり得ない設定が入っていると「モヤる」(「むず痒くなる」とはそういうことだと解釈した)ことがあるか? と言いたいのだろう。
『デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団(Devil Summoner: Raidou Kuzunoha vs.the Soulless Army)』(プレイステーション2)は、日本の近現代史に詳しい人間から見れば「あり得ない設定だらけ」なのだけどね…。1931年の日本が舞台なのに元号が「大正20年」(史実だと昭和6年)になっているとか、この時代の日本で「宇宙に飛ぶロケットを開発する」(第拾壱話より)、とかね。
ゲームならある程度はあり得ない設定でも構わないのだが…、私がどうしても許せないのは、何度か言ったけど「関東大震災が無かった」設定になっていることだ。ゲーム上ではっきり断言しているわけでは無いが、設定資料集にはそれらしいことが書かれているので分かる。このテーマはいずれ本家「ろーだいありー」の「『超國家機関ヤタガラス』はなぜ怖ろしいのか?」シリーズで詳しくやりたいのだけど、思考をまとめるために少しだけ書いておきたい。そろそろ防災の日(関東大震災が発生した日に因んで作られたもの)なので。
このゲームで関東大震災が無かったことになっているのは、「天皇と国体を護る組織・超國家機関ヤタガラスの霊的な力によるもの」と思われる。一見すれば「関東大震災が起きずに死者が出なかったから良かったじゃないか」と思えるかも知れない。しかし私はこの設定には善意は感じない。むしろ悪意があると思う。善意でそういう設定にしたように見えても。
と言うのは…、関東大震災の後、デマによって多数の在日朝鮮人や在日中国人、さらに日本人までもが市民や警察、軍人によって殺害されたのだが、これは「朝鮮人虐殺」と呼ばれる。
そう、関東大震災を無かったことにしたのは、「せめてゲームの中だけでも、『震災が無くて良かった』ことにしたい」という願望よりも、「せめてゲームの中だけでも、『日本の市民や警察、軍人による朝鮮人虐殺が無くて良かった』ことにしたい、そんな酷い事件を起こす日本人は居ないってことにしたい」願望の方が強く出ていると私は思う。
もちろん、関東大震災も朝鮮人虐殺も無ければ良かったのは確かだけど、日本では右翼による「朝鮮人虐殺は無かった」とか、「『朝鮮人が井戸に毒を入れた』などという噂は本当だった、だから身を守るために朝鮮人を殺したのだ」(歴史捏造論文の「ラムザイヤー論文」にもそのように書かれているらしい)などという歴史修正(改竄)主義言説が広まっていることを踏まえると、この設定は使ってはいけないものだと思う。だって「朝鮮人虐殺を無かったことにしたい」右翼に喜ばれやすい設定だからだ。「関東大震災が無かったってことは、朝鮮人虐殺も無かったことになるよな? それは素晴らしい設定だ。そんな酷い事件を起こす日本人など居るはずは無いもの」と。