『真・女神転生II』(スーパーファミコン他)の世界「TOKYOミレニアム」は、「メシア教」という架空の宗教(キリスト教がモデル)が支配しており、対立する「ガイア教」は弾圧されている設定だ。メシア教は一見するとTOKYOミレニアムの住人を保護しているようだが、実は「選ばれた者だけを残し他は滅ぼす」という過激な思想を持っている、恐るべき宗教だった。
『真・女神転生II』の主人公はメシア教が創り出した「メシア(救世主)」であるが、プレイヤー次第ではメシア教を滅ぼしてしまうことも可能なのだ。
これに対して『デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団(Devil Summoner: Raidou Kuzunoha vs.the Soulless Army)』(プレイステーション2)の方はどうだろう。このゲームには大正天皇守護組織「超國家機関ヤタガラス」(以下ヤタガラス)が日本を護っている設定があるが、「秩序を重んじるが排外主義的な」メシア教と似たところもあり、さらによく考えれば「天皇の起こす戦争を支持する」怖ろしい組織だと分かるだろう。だが、『真・女神転生II』とは異なりヤタガラスを滅ぼすことは出来ない。
「ヤタガラスは本当はメシア教と同じような怖ろしいもの」として描くのなら、ヤタガラスを滅ぼす話も入れなければならないはずだが、なぜヤタガラスは滅ぼせないのか? やはり「右翼が抗議するから天皇守護組織を滅ぼすわけにはいかなかった」とか、「神道(実質的には国家神道だが)を元ネタとするヤタガラスを滅ぼすのは日本人として忍びない」という思いがあり、逆に「日本ではキリスト教がモデルのメシア教を滅ぼしても大して問題にはならないだろう」という、キリスト教に対する一種の差別心もあるのでは…、と思ってしまう。